『ぜんぶ、フィデルのせい』
2006年のフランス映画。1970年代の反体制(左翼)運動が始まった頃のパリが舞台。
ブルジョワな生活を送っていた少女アンナが、フランコ独裁政権に反対する伯父の死によりスペインから逃げてきた伯母家族と共に生活するようになる場面からスタート。両親は、伯父の死をきっかけに急速に左傾化し、社会主義をめざす大統領選挙が行われるチリへ旅立ってしまい、戻った時には父がすっかりゲバラかぶれとなってる。驚き桃の木山椒の木という塩梅のアンナなどお構いなしに、ブルジョワな生活を捨て去り、質素な暮らしを始める両親に最初は反発するアンナですが、色々な人に出会ううち、少しずつ変化を受け入れ、成長していく。
ストーリーは徹底的にアンナの視点で描かれており、時代背景の説明なんて一切ない。1970年代にどんなことがあったか、ヨーロッパでなにがあったのか、チリがどんなだったのか、そんなことを知らない俺でも普通に見れたのは、徹底的なアンナ(何も知らない子供)視点だったからじゃないかな。
予備知識として時代背景を知っていた方が何が起きてるのかを理解しやすいとは思うけど、アンナと同じ視点に立って何が起きてるのかと右往左往(政治的な意味でも)する方が楽しいような気がする。わからないことはアンナがオトナに聞いてくれる。テンポ良くというか、光陰矢のごとしというテンポでストーリーが展開してくのも当時の時代を描写しているように思える。
アンナ役のニナ・ケルヴェルは大人に媚びない子供をよく演じていて非常にいい。8割方怒ってるんですが、時折見せる子供らしい笑顔にはほっこりしたりする。アンナは逆境に戸惑いつつも乗り越えようとする強い子だなぁ、と感心する。
ヨーロッパ映画らしく静かに強く訴えかけてくる映画で、涙することもないし興奮することもない。ただ静かに語りかけてくるので、そういうのが好みじゃない人は眠気を誘われるだけじゃないかと思う。ちなみに、タイトルのフィデルは、フィデル・カストロのことで「自分の生活がこんなに激変してしまったのはカストロのせいだ!アカヒゲ野郎!」という意味。
ラストはこのストーリーの縮図のようになっていて、このストーリーは形を変えて死ぬまでループするんじゃないかと思った。人間ってのはそうやって生きていくんだなぁ。
